小川さんの家の思い出2

べてるな日々

20代前半の頃に浦河赤十字病院のデイケアで、治療を受けていたら、北海道大学の物理の入試問題が殆ど解ける様になっていたから、馬鹿にしたら駄目である。ペラペラと喋る様にコントロールされると、どうなんだろう。ぎこちなくなるから、駄目だろうか。べてるのメンバーさんは、韓国語の勉強に邁進され、「韓流ドラマは300本観た」と言っていた。「もう、50歳になったんやけどね」「娘は18歳になったんや」語る力を身に付けるという事は大切である。しかし、聞き取り専門みたいなのも心地良かった。語る前に、聞くというのは重要である。「何処も焦点が合わない様な語り」のままで良いのだろうかと、疑問が沸くが、「何処も焦点が合わない様な語り」の次に「聞き取り」になる。「そうだ。麻雀出来る?」べてるのメンバーさんは私に問い掛けた。「出来ないんですよ。将棋もルールが分かるくらいです。韓国語の勉強って、一日、何時間位しているんですか?」と、関心が沸いたが、無為・自閉という感じで、自己対処は出来なかった。言葉が喋れなくなると、というかバランスが取れなくなると、不調が現れる。喋れる様になると、色々な部分が活性化する。2回目にべてるに来てから、10年が経過したが、日本語失調症のままである。「前は弾丸トークだったのにな。薬で性格が変わったのかな?」という感じであるが、「共生・共死を謳う共同体である」としか言い様がない。「勝手に治すな、自分の病気」だから、人の手数を掛けるやり方が良い。「降りてゆく生き方」という言葉も、べてるのメンバーさんの語りを聞いていた時に、「この感じが『降りてゆく生き方』かな」と思った。「口が付けてあるカルピスウオーターは飲めない」この事であっても、それが言えないばかりにストレスが溜まって険悪になるという事があるから、初等教育的な所も大切である。「本当に共生・共死なんだな」と思うと共に、技法の手前にある物の重要性を心から意識させられる。精神科の治療というものは、「この人と共に歩んで来た。これからも共に歩んで行く」という、技法の手前にあるものが重要視される。観念して、終わろうとした時に、この人達が助けてくれたという感じである。「私、2回、自殺未遂したんですけどね」べてるのメンバーさんは語り続けた。韓国語はペラペラであるらしいが、麻雀や将棋も出来て凄い。すぐに治ると、浦河町でやる事がなくなるから、都会に帰って行ってしまったりする傾向がある。もし、私が健常者だったら、バリバリ働いて、奥さんも子供も居ただろうが、孤独であっただろうという想像が付く。病気があるから仲間が居て、「共生・共死のコミュニティ」に受け入れられた。


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